今日の業(わざ)をすべて終えて、
最後に厨房の灯りを落とす。
暗闇に向かって、
「おつかれさま。みんなありがとう。」
ぺこりと頭をさげる。
さあ、ひとっ風呂。
一日の汗を流し、
酷使した右脳、左脳をリセットするこの儀式は、
旨い一口めのビールのために欠かせない、
とっておきの日課です。
湯船にゆっくり体を沈めながら、
表面から1センチ足らずの上澄みだけを静かに集めて溢れていくお湯を眺めていると、
なんとなく
アルキメデスな感じがして、
ちょっとうれしくなります。
肺に溜まった空気を深く一度吐き出すうちに、
皮膚の細胞が湯の温度に馴染み始めると、
無意識に
つい口を衝いて出る鼻歌。
「あっ、『都はるみ』だ・・・。」
たしか昨夜はクラプトンの『ワンダフル・トゥナイト』だったのに、
聞き覚えのあるこのメロディーは、
まぎれもなく『涙の連絡船』なのだった。
ぱん衛門