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望月さんは、店のお客さん。


常連さんです。


ちょうど僕の一番下の叔母さんぐらいの、

夫婦仲のとてもいい、

物腰の優しい御婦人です。


今日もまた、

いつものように買い物を済ませ、

いつものようにレジカウンターから7歩で店のドアまで。

ところが

8歩めでゆっくりこちらに向き直り、


「いつも美味しいパンをどうもありがとうね。」


と微笑んだまま、

深々とお辞儀をなさったのです。


そんな不意の衝かれ方は

生まれてはじめてだったから、

ビックリするより先に、

感激するより先に、

不覚にも、

思わずウルウルしてしまい、


「恐縮です。精進します。」


と言ったきり、

負けないくらい頭を下げて固まってしまったのでした。 


ぱん衛門